On Green Dolphin Streetを研究してみる
facebookに「The Sax Studio」というページを開設していて、そのページだけ公開しようと思いましたが、こちらでも残しておこうと思います。
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スタンダード曲考察
「On Green Dolphin Street」
ジャムセッションのThe定番曲です。
テーマの最後の2小節間(III-VI-II-V)を3回繰り返すかどうか?
打ち合わせをしないジャムセッションでは、迷って崩壊することもあるあのパートに関して考察したいと思います。
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オリジナルは一般的なスタンダード曲と同じ32小節の曲です。
29~30小節目を3回繰り返しを追加して、今では誰もがやるようになってきました。
しかし、こういうスタンダード曲こそしっかり原曲を勉強しないといけません。
まず、本当のメロディーを知ること。
オリジナルのテーマは、31小節目のトニックコードに着地してもメロディーは5度の音を歌い続けています。なんとなく締まらないといか、浮遊間があるまま曲が終わります。
歌モノのスタンダード曲は先ずは歌手を聞くようにしています。
その中でも僕は一番エラ・フィッツジェラルドを信頼しているのですが、オリジナルのテーマを嘘偽りなく歌いきるのは彼女の右に出るものはいないと思います。
そして莫大な量のスタンダードを彼女は歌っているので、先ずはエラが歌っているか調べています。
やはりこの曲も歌っていました。はぁなんと艶ややかな!これぞジャズボーカル!
そして最後のパート、「Green Dolphin Street~♪」とオリジナルに忠実に5度で伸ばして終わっています。
しかもオリジナルメロディーとインストでよくやるメロディーは全然違うではないか!
ここ結構重要です。
先ずはこのオリジナルのテーマを知ること。
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さて、それではインストでやる定番のキメの話。
そもそも誰が始めたのか?
色々調べていますが、いまのところおそらくマイルスのバンドが最初なのでは?と思います。
「1958 Miles」 のアルバムに収録されていて、録音は表題通り1958年。(発売されたのは70年代と、かなり後です。)
その後、マイルスはこのアレンジで幾度となく何年にも渡ってこのアレンジで演奏してきました。
しかし、おそらくマイルスのアレンジではなくビルエバンスのアレンジではないだろうか?と思います。
1959年のエバンスのトリオに収録されているものとイントロのパターンも(ボイシングも)ほぼ一緒。
マイルスのバンドを抜けた後もこのアレンジを好んで弾き続けたのではないだろうか?
余談ですがエバンスの名アレンジといえば、枯葉のイントロでしょう。あれも晩年に至るまで長年エバンスは演奏していますね。
その後ウイントン・ケリーがマイルスバンドに入りますが、ケリーのリーダートリオの名盤「kelly Blue」でも演奏しています。
3回繰り返さない音源だけど、ナイスコンピング!というのはグラント・グリーンのリーダー作に入っているソニークラーク。好きです。ちなみにソニークラークとビルエバンスは仲良しだっと聞いたことがあります。
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3回繰り返さない音源で、気になるのがアーマッドジャマルのCount ‘em 88というアルバム。
1956年の録音。
コードはI7(#9)のイントロからそのままテーマに突入。スペースを使ったテーマの歌い方と、ダイナミクスの幅の広さ。
マイルスはジャマルにかなり影響されているので、この録音もマイルスは参考にしているのかな?と思ったり。
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と、こんな感じで僕はいつもスタンダード曲を考察しています。
ここまでがスタートライン。そしてメロディーをどのように歌う(吹く)か色んな演奏を参考・考察します。曲によっては慣れないコードチェンジを練習したり、という流れです。
ここ数年原点に戻って歌詞をよく勉強するようにしています。すると、この歌い方はあまり好きではないな~、結構適当に歌っているなぁ、と思うことも多くなりました。
先ずは忠実に歌えること、インスト楽器はテーマに忠実に演奏できることが大事だと思います。
その先にオリジナリティが生まれます。
しかし、これだけ書いていますが、僕はいわゆるスタンダード歌モノ原理主義者ではありません。例えば今回のような3回繰り返しのキメがインストとしては定着していますし、よくできているアレンジだと思いますので、これはこれで覚えて活用する他ありません。
他のスタンダード曲も、例えばコードも揉めることがよくあります。
オリジナルはこっちだから!と。
その気持ちも大事だし、スタンダードとして定着しているものを寛容に受け入れることも大事。
そして、自分もリハーモナイズやリズムのアレンジに挑戦することもとても大事でしょう。
またスタンダード曲の考察を発表するかも?しないかも?
ではでは。