平山順子「Relic Shrek Shellac」という作品

サックスの平山順子さんのCDが2月に発売されました。
同じアルトサックスという楽器で洗足ジャズ科の同期でもある彼女、ちょうど僕とほぼ同じタイミングで初リーダーアルバムを発表ということで、お互いの作品が気になり交換しました。
そしてお互いのCDレビューを書こうという話に。

ここからはCDレビューというより、平山さんのプライベートな話にもなるかもしれませんが、きっとファンはそういう話も聞きたいはず(笑)なので、思い通り綴らせていただきます。


思えば、平山さんとは全然違う道から始まって、今はお互いがかなり近いところにいるように個人的には感じます。
彼女はもともと洗足のクラシック科で勉強し、ジャズ科に再度入学。
僕は中村誠一さん、彼女はボブ・ザングさんに師事。
卒業後僕はアメリカへ、彼女はライブ等の音楽活動と共に講師業にもかなり力を注いできました。

この講師という職業は、10年以上楽器を演奏していても、人に的確に教えるということは意外に難しいものです。
おそらく、どんなに凄いミュージシャンでも教える事は苦手、という方もたくさんいるかと思います。
僕は日本に帰ってきてからなので3年程前から始めていますが、平山さんはもう10年以上続けている大先輩であります。
日常的に人に教えることによって得られるものは計り知れないものがあります。
「教えることは教わること」だと思っていて、実際僕の場合、アメリカから帰ってきて沢山の人に教えることで技術的には飛躍的に上達しました。
平山さんもそういうところはあると思います。
確実に昔の音とは違います。


音。
これは楽器を演奏する上で、一番個性が出るところであり、努力して音色を良くもできますが、努力しても変えられないところはあります。
とりわけ、管楽器の音色は声帯に委ねている部分も意外に大きいので、ボーカリスト同様持って産まれたもので勝負する覚悟が必要なのです。
彼女は楽器オタクでもあるので、自分の身体に合った楽器(本体とマウスピース、その他ストラップなどの細かい物まで)を選んでいるように感じます。
自分の持って産まれてきたもので勝負するところ、声帯や骨格などの身体的に変えられないところは楽器に身を委ねてカバーする必要があります。
平山さんはそのバランスがとても良いいように思います。


今回のCDのキーワードはまさに「音」。
平山さんの音色のすばらしいこと。質感、艶やかさがとても良い。
4〜5年前と比べると、ここ最近は前述したボブさんの影響が自分の物として内側の奥深いところから出てきているのかと感じました。
そして平山さんの音だけではなく、バンド全体の音がとても柔らかくて、生々しくて心地よいのです。


また、ジャズファンには嬉しいスタンダード曲も入っています。
ジャケ裏面を見て、「へぇ〜珍しい、1曲目からスタンダードなんだ」と思ってCDを聴いたら、納得。
一曲目って、大事ですよね。しかも初リーダー作。
そこにあえてスタンダードを持ってくるのにはわけがあると思います。
そのアレンジのセンスの良いこと。
演奏はもちろん、アレンジとバンドのサウンドを最初の一曲で印象づけられ、
直ぐに平山ワールドに誘いこまれます。

オリジナルの作曲センスは昔から羨むほど、本当に素晴しいんです。
ピアノの角脇真のオリジナルも入っていますが、これも良い。
二人とも共通することは、演奏する側から言うと演奏するのは難しいのですが、聴いている方は全然そんな風に聴こえないような心地よさを感じます。
普通はそう書きたくても書けないんです。
僕の曲なんて、難しそうに聴こえて、実際難しいんです(笑)


聞き終わると、「あれ、もう終わったんだ」と独り言をつぶやきました。
プレイヤーに目を向けるとなんと67分!
最近のCDの中では多い方なんですが、あっという間に終わってしまう感覚で、
もう少し聴きたくなります。
しかしそれがまたまたいいんでしょうね、次の作品やライブを見たくなりますから。


この作品はなんと平山さん個人でレコード会社(KOTORI LABEL:コトリ・レーベル)を立ち上げたということも特筆すべきことでしょう。
こういう作品を世に出したい、という意見がすんなり通るのが個人レーベルの強みではありますが、それなりにリスクはあります。
そのリスクを背負って会社設立しています。
しかし、この先こういうレーベルが日本の音楽シーンを変えていくことになります。
彼女の第2作目や、彼女がプロデュースする作品など、色んな作品が出る事を期待して、これからもKOTORI LABELを応援していきましょう!



そんな平山さん、NHK-FMのJazzの老舗番組「セッション」に出演予定だそうです。
応募のして抽選の上、当たれば無料で観覧できます。
お近く方、是非応募してみて下さい。
また、是非ライブにも行ってみて下さい。

平山さんのサイトはこちら



このジャケットデザインも平山ワールド全開。


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